Yoga
ヨーガ
ヨーガ Yoga は、「馬にくびきをかける」という意味の動詞の語根「yuj」から派生した名詞である。つまり語源的に見ると、馬を御するように心身を制御するということを示唆しているようである。
歴史
明確な起源は定かではないが、紀元前2500年-1800年のインダス文明に、その遠い起源をもつ可能性が指摘されている。同文明の都市遺跡のモヘンジョ・ダロからは、坐法を組み瞑想する神像や、様々なポーズをとる陶器製の小さな像などが見つかっている。
ヨーガという語が見出される最も古い書物は、紀元前800年-紀元前500年の「古ウパニシャッド初期」に成立した『タイッティリーヤ・ウパニシャッド』である。また、紀元前350年-紀元前300年頃に成立したとされる『カタ・ウパニシャッド』にはヨーガの最古の説明がある。
感官の確かな制御がヨーガである(『カタ・ウパニシャッド』6-11)
2世紀-4世紀ごろ、サーンキヤ学派の形而上学を理論的な基礎として、その実践方法がパタンジャリによって『ヨーガ・スートラ』としてまとめられ、解脱への実践方法として体系づけられた。内容としては主に観想法(瞑想)によるヨーガ、静的なヨーガであり、それゆえ「ラージャ・ヨーガ」(=王・ヨーガ)と呼ばれている。その方法がアシュターンガ・ヨーガ(八階梯のヨーガ)と言われる8つの段階のヨーガである。ヤマ(禁戒)、ニヤマ(勧戒)、アーサナ(座法)、プラーナーヤーマ(調気法、呼吸法を伴ったプラーナ調御)、プラティヤーハーラ(制感、感覚制御)、ダーラナー(精神集中)、ディヤーナ(瞑想、静慮)、サマーディ(三昧)である(『解説ヨーガ・スートラ』『魂の科学』参照)。また同書を根本教典として「ヨーガ学派」が成立した。同派は、ダルシャナ(インド哲学)のうちシャド・ダルシャナ(六派哲学)の1つに位置づけられている。 『ヨーガ・スートラ』では、ヨーガを次のように定義している。
ヨーガとは心素の働きを止滅することである(『ヨーガ・スートラ』1-2)
その時、純粋観照者たる真我は、自己本来の姿にとどまることになる
(『ヨーガ・スートラ』1-3)(『魂の科学』参照)
12世紀-13世紀には、タントラ的な身体観を基礎として、動的なヨーガが出現した。これはハタ・ヨーガ(力(ちから)・ヨーガ)と呼ばれている。現在世界中に普及しているヨーガはこのハタ・ヨーガの方法である。内容としては難しい坐法(アーサナ)や調気法(プラーナーヤーマ)を重視し、超能力や三昧を追求する傾向もある。
ヨーガはバラモン教、仏教、ジャイナ教の修行法でもあった。また、ハタ・ヨーガの経典の中にハタ・ヨーガ・プラディーピカー、ゲーランダ・サンヒター、シヴァ・サンヒターもある。